せ》一枚ひっかけたきりで、風呂敷包を一つ首ねっこに結《ゆわ》いつけて、それで長の道中をして来た一人旅の子供と見えるから、それで町のおかみさんたちも、おのずから同情の眼を以て見るようになったものと見えます。
しかし悪太郎どもは悪太郎どもで、
「やい、跛足《びっこ》が来た、あれ見ろ、跛足のチビが来やがった」
古草鞋《ふるわらじ》を投げたり、石を抛《ほう》ったりして、
「こっちを向いて睨みやがった、おい、あの面《つら》を見ろ、ありゃ子供じゃねえんだぜ」
なるほど、悪戯《いたずら》をしかけた悪太郎どもの方を睨みつけた旅の子供の面《かお》を見れば、決して子供ではありませんでした。
「かわいそうに、あの子供は跛足だね」とせっかく同情を寄せた町のおかみさんたちまでが、笠の下からその面を見た時には呆《あき》れてしまって、
「おやおや、あれは子供じゃなかったんですね」
と言いました。
笠を被[#「被」は底本では「破」]ったなりで見れば子供に違いないけれど、笠の下からその面を見れば、子供ではないのです。
「なんだか河童《かっぱ》みたような、気味の悪い」
これは子供でもなし、また河童でもなし、宇治
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