とになるものですか、これは毒……恐ろしい毒と思っているうちに金魚がブクブクと死んで浮き出して来ます、その中を尾鰭《おひれ》を打ってその大鯉が苦しみもがいてもがいて、とうとうもがき死《じに》をしてしまいました。女中たちはみんな面《かお》を見合せて、人の色はありませんでしたが、わたしは今の真鯉の死態《しにざま》から、そのお邸の御主人が膳部の廻りを一人で見ていたこと、なんだかその奥に怖ろしいものがあるような気がしてたまりませんでした。そのうちに日が暮れました」
「…………」
「わたしが出て行く、その前を島田先生がブラリブラリと歩いていらっしゃる、ちょうどお月様が出ていました。先生を先に立てて行けば夜道をしても怖くないからと、ちょうど帰り道も同じ方へ行くのですからあとをお慕い申して行ったのですね。そうして行くと、その時わたしの後から来てすれ違って通り抜ける侍、見たような人でありました。ところは聖堂の森に近いお濠端《ほりばた》でございました。平素《ふだん》から淋しいところであるのに、この頃は物取りがあったり辻斬りがあったりして、宵のうちから人通りはないようなところなんですね、そこを島田先生が一人
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