たか、それをそなたがどうして知っている、よく話してもらいたい」
「ちょうどよい折ですから、お話し申しましょう、知っているだけをお話し申しましょう」
お絹は柴《しば》を折りくべて、それを火箸《ひばし》で掻き立てながら、
「あの先生が、或る時、旗本のお邸へ招かれたと思召《おぼしめ》せ、そのお邸で、いろいろ武芸の話が出て、それからお夕飯の御馳走になったのでございます」
「その旗本というのは誰の邸」
「それは申し上げられませぬ、あとで申し上げる時節があるかも知れませぬが、今は申し上げられませぬ」
「それから?」
「島田先生も、大へん御機嫌《ごきげん》がよくて、常よりは御酒《ごしゅ》も過ごしなされ、御料理もよくいただいて、さてその帰りでございます」
「その帰りに?」
「そのお邸でお乗物をと申されたのを、お断わりなすって、今宵はなんとなく心持が面白いから歩いて帰ると、いくらか微酔機嫌《ほろよいきげん》でもあったのでございましょう、伴《とも》をつれずに、たった一人で下谷の御徒町《おかちまち》の方へお帰りになったのでございますよ」
「御徒町の道場へな」
「ちょうどその日に、わたしもまた同じお邸へ上っ
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