した」
「かわいそうなこととは?」
竜之助は聞き耳を立てる。
「まだお聞きになりませんか」
「まだ聞かない」
竜之助は、我知らず声がはずむ。
いろいろの人にも会い、いろいろの目にも遭ったけれど、要するに竜之助の眼中に残り、脳裏に留まって去らざるはただその人あるのみ。その人が斯様《かよう》な女から同情の言葉を受けるような身になろうとは――竜之助は、それを聞きたい。
この時また、壊《こわ》れかけた扉がガタリビシリ。
「夜かぶりを持って来ましたが、はあ、御免下せえまし」
男が一人、夜具蒲団と竹の皮包とを持って来てくれたのはそのままにして、話は島田虎之助|最期《さいご》のことにつながりました。
「島田先生は毒で殺されたのでございます、ただの死に様ではございません」
「毒で殺された?」
「病気で亡くなられたように、表面はそうしてありますが、毒殺なのでございます」
竜之助は愕然《がくぜん》として驚く。
「誰が殺した、誰が島田を」
「それは誰だか存じませんが……あまり技《わざ》が出来過ぎますると、自分はそのつもりでなくても、人の恨みが重なりますからね」
「お絹どの、どうして島田がそうなっ
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