ら自分のあとをついて来る様子です。
七兵衛は、揚屋町をグルリと廻って、また道筋へ出る。と見れば右の小間物屋は、やっぱり後をついて来る。やむを得ず七兵衛は、用もありもしない下《しも》の町《ちょう》へ出て、ぶらりぶらりと軒並《のきなみ》の掛行燈《かけあんどん》などを見て行く、一廻りして中堂寺町へ出て、後ろを見ると小間物屋の姿は見えない。
占めた、七兵衛は喜んで、三たび道筋へ出ると煙草屋がある。煙草を買って行こうとその店へ面を突っ込んで見ると、そこの店先に腰をかけてプカリプカリ煙草をふかしているのが右の小間物屋です。七兵衛も、いよいよ気味が悪くなった。知らん面で、煙草を買って詰め替えて、店を出ると、右の小間物屋も、ソロソロとあとをつけます。
これはいけない、出直そう。
七兵衛は、また大門を引返して、丹波口から東をさして出ると、小間物屋もやって来る。
七兵衛は尻《しり》を端折《はしょ》った。そうして、すっと、歩き出した。今まで廓《くるわ》の中をブラリブラリと歩いていたのとは足並《あしなみ》が違う。
小間物屋は、急ぎ足で追いかけた。
七条通りまでは追いかけたが、そこでふっつり[#「
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