ごうけつぞろ》いでございます。わしどもも、その浪人衆の御贔屓《ごひいき》を受けているのでございますよ」
「で、その頭《かしら》は何という方ですかね」
「お頭は芹沢様に、近藤様」
「芹沢様に近藤様……お大名ですかね」
「なに、お大名でも旗本でもありません、どちらも浪人衆で」
「お名前は、何とおっしゃる」
「芹沢様の方が鴨」
「鴨ですって? 妙なお名前ですね」
「全く妙なお名前ですよ」
「それでは、近藤様の方はあひる[#「あひる」に傍点]とでも申しますかね」
「冗談《じょうだん》いっちゃいけません、そんなことが浪人衆の耳に入ると、斬られちまいますぜ。近藤様の方は、だいぶ威勢のいいお名前だ、イサミ、勇とおっしゃいます」
「なるほど、イサミ……待て待て……近藤勇――お名前を聞いている。それで何かい、親方、その芹沢様と近藤様と、お二人が頭で、浪人衆がどのくらいおいでなさるかね」
「そうさね、どのくらいと言って、わしらには確《しか》とわかりませんが、ちょっと見たところで七八十人、それにあちらこちらに出張所というものもあるようでござんすから、みんなではなかなかの人数でございましょう」
「お扶持《ふち
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