手は利《き》いていたはずだが」
「佐々木も速見も聞ゆる使い手じゃ、多勢で不意をやられてはたまるまい」
「うむ――そうすると新徴組は瓦解《こわれ》たか」
「壊《こわ》れはせぬ、二つに割れた。最初、江戸から京都《こちら》へ上ったのは総勢二百五十人、それは大方、今いう清川が手で江戸へ帰って、残るは芹沢と近藤を頭に十四人」
「うむ、僅か十四人――」
「それが中堅となって、新たに新撰組というのを立てた、もとの新徴組の返り新参もある、諸国から腕節《うでぶし》の利く奴も集まる、壬生《みぶ》の南部屋敷に本営を置いて、芹沢鴨と近藤勇を隊長に、土方歳三と、新見錦山と南敬助とが副将じゃ」
「そうか」
「拙者もこんな風《なり》をして、浪人どもの捜索と、腕の利いた同志を探しに歩いている。よい所で行き逢った、早速壬生へ行こう」
「待て、待て」
竜之助は、直ちに壬生へ走《は》せつけることについて、多少考えねばならぬことがある。
「芹沢と近藤との間柄はどうじゃ、二人とも無事に組んでいけるかな」
竜之助に言われて、山崎は眉根《まゆね》を寄せ、眼を光らかして、
「それだそれだ、そこの雲行きが危ないて」
「危ない?」
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