ぞく》。
 三人は長い刀を抜きつれて、芹沢らが寝ている間へ向って行く、近藤勇はそのあとから、刀を提げて凄い目を光らせながらついて行く。
 寝ていた襖をあけたけれども知らない、酔ったまぎれに夜具を撥《は》ねのけ女も男もだらし[#「だらし」に傍点]ない寝すがた。土方はツカツカと進んでその寝すがたを調べてみた。
「ふむ、これが平山、女は小栄だな」
「平間に糸里か、不憫《ふびん》ながらこれも相伴《しょうばん》。さて大将は」
 やや高い声で言ったけれども、まだ覚めはしない。屏風《びょうぶ》の中をのぞいて見ると、お梅は寝衣の肌もあらわに、芹沢は鼾《いびき》が高い。
 土方はニッと笑って、次の間の入口に立っていた近藤勇に合図する。この時、小栄と寝ていた平山五郎がふいと眼をさます。
 眼をさまして、さすがに平山もその様子の変なのに驚いた。枕を上げようとする途端を藤堂平助がただ一太刀。
 平山の首は宙天《ちゅうてん》に飛んで、一緒に寝ていた小栄の面《かお》に血が颯《さっ》とかかる。小栄は夢を破られてキャーと叫ぶ。
 この時早く、芹沢とお梅との寝ていたところの屏風は諸《もろ》に押し倒されて、三人の黒装束は
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