したも同じその胸のなかの魂のない心!……いや、これらは昔からの固定観念かも知れない。そしてこれらはおれの舞台上の過程であるかも知れない。こんなもののシンメトリーが、おれというものを、或型に入れるのかも知れない。それこそいままでにない新らしい型の混合の最初かも知れない。そしておれは形而上形而下以外の別のものになるのかも知れない。そしておれは不死の約束に入れられて、新らしいものの継続をつづけるのであるかも知れない。」彼は半信半疑の心で、自分自身を嚇《おど》しながらも、黄金の都会へでも来ているかのように独り言を囁《ささや》いた。「それにしても、おれは浅薄にも溜息とともに大学を止《よ》した。一たいその遠因は何に拠ったのであるか。それは思い出さなければならないほど遠い昔のことであろうか。あ、それはそれほど遠い過去のことであった、それ以来、おれはずっとアンニューイという生物のような智力に苦しめられつづけて来た。それは闇のなかに佇《たたず》む真黒な刺客と何らの変りもないものである。それは人間生活のうちで最も古くそして最も新らしく、時に従って更生を繰返している、その人生初期の観念に破れた、その反動のた
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