した――の理由が必然となるであろう。日常語とは云うまでもなく日常的な知識に於て語られる言葉を云うのであるが、常識[#「常識」に傍点]は恰もこの日常的な知識を意味する。常識に於て成り立つ概念、それは常識的概念である。処で常識は一面に於て不完全な知識を意味する場合を有つであろう。まだ充分に専門的となることの出来ない処の、或いはそれ程専門的であることを必要としない処の、稍々不定な内容を持つ知識、それが常識の有つ一面である。かくすれば常識はやがて専門化せられるべき、専門化せられて初めて独立した知識となり得るような、非独立的な価値しか有たない知識として、消極的に理解されるに過ぎないであろう。この時、常識とは幼稚なる学識[#「学識」に傍点]に過ぎないように見える。処が之に反して常識は他に、も一つの異った概念を有つ。その時、もはやそれは不完全な知識ではなくしてそれ自身完全なる知識となる、ただそれが学識ではないという迄である。それ自身に於て独立の価値ある日常的な知識、之が常識のもつ他の一つの意味でなければならない。もし常識に何も知識としての独立性と価値とがないならば、それはどのような理由の下にも、「迂
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