は空間の実在性(存在)としての性格を覆うものではない。況して空間が表象である――空間の性格は表象という意識である――などと云うことにはならないことを注意して置こう。さてこのようにして空間は存在の性格にぞくす。処が現象学的還元はこの存在の性格を否定した。故に又空間の性格も之によって否定されないわけには行かない。即ち茲に於ては空間の性格は意識の性格によって優越される。かくして空間の性格は存在[#「存在」に傍点]であって従って意識[#「意識」に傍点]ではあり得ないことが結果した***。空間を表象として、知覚として又直観として理解することは少しも不都合ではない。ただ併しそれは決して空間の正当[#「正当」に傍点]なる概念ではない。何となればそれ等のものは空間の性格・優越を理解せしめる代りに空間の任意の一つの特徴に於ける還元性――吾々の意味に於ける――を云い表わすに過ぎないから。
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* 例えばエールリヒ、前掲書 S. 103 参照。
** 「天国に於ては一切の物は吾々の世界に於けると全く同じに空間に位置を占める。併し天使等は場処とか空間とかの観念を持たない
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