スコラ哲学を一貫する本流であった。例えば Gent, Die Philosophie des Raumes und der Zeit 参照。
*** 位置も亦アリストテレスの範疇の一つである。位置[#「位置」に傍点]と空間[#「空間」に傍点]との概念規定の相異は、位置解析[#「位置解析」に傍点](Analysis Situs)と幾何学[#「幾何学」に傍点]との相異から間接に想見することが出来るであろう。
**** プラトンのティマイオスに於ける空間(χωρα[#「ω」はアキュートアクセント付き])――所謂「プラトンのヒューレー」、〔prima:re Materie〕 ――はかかる空間と考えられる。これが限界されたるアリストテレスの場処の如きものではなくして単なる延長で[#「単なる延長で」に傍点]あること、及び単にアナロギーや譬喩によって空間と呼ばれたのではないということ、その考証に就いてはボエムカーの研究を信じてよいであろう(Baemker, Problem der Materie in d. griechischen Philosophie, S. 174−5 及び S. 181 参照)。
[#ここで字下げ終わり]


 さて最後に挙げた四つの名辞が何れも空間概念の夫々一つの特徴のみを指し示す処のものに過ぎないことを、吾々は見た。このことからして次のことが帰結して来る。空間概念は、以上に掲げられた名辞[#「名辞」に傍点]に於てその一部分を云い表わされるような夫々の事態[#「事態」に傍点]を凡て[#「凡て」に傍点]含む処の、或るものでなければならない。そして名辞の分析[#「名辞の分析」に傍点]は今之を試みた。事態の分析[#「事態の分析」に傍点]が次の仕事である*。処で已に述べた処に基いて、この事態は空間概念のかの存在性である外はなかった。そして空間概念は――吾々は何回でも繰り返す――常識的概念であった。故に常識的空間概念の存在性の事態の分析、之が次の仕事になる。というのは、単なる事態の分析ではなくして存在性の事態の分析であり、又存在性という名辞の分析ではなくして存在性という事態の分析である。さて併しこの分析は例えば物理学的或いは幾何学的な、専門的[#「専門的」に傍点]知識を借りてそれに基いて行なわれることは出来ない(尤もこれ等の知識を参照する便宜を利用することは望ま
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