念を吾々は決して承認しないのだが――経済主義に対立する意味に於ても亦社会学主義[#「社会学主義」に傍点]なのである。だからデュルケムの社会学は――而も夫は一つの世界観・哲学に名づけられるに値いするが――、社会の物質的基底(物質的生産関係)の分析から出発しないで、多少ともそれが社会プロパー[#「社会プロパー」に傍点]化された処の中途の段階から出発する。分業[#「分業」に傍点]の概念などが之に外ならない(分業論はブルジョア社会学の最も得意とする業績である)。実際ブルジョア社会的に理解された社会は、分業の進歩によってでも進歩する外に変化の仕方を有てないだろう。
 吾々の[#「吾々の」に傍点]社会心理学は、意識の分析を、社会の分析から始めねばならない。而もこの社会の分析は、所謂社会関係からではなくて経済関係(物質的生産関係)の分析から始められねばならない。そうしないと、社会は根柢的に解明出来ないのである。こうすれば社会は初めて、歴史的発展段階[#「歴史的発展段階」に傍点]を有つ一つの生命過程として合理化される。こういう社会の分析から出発して初めて、意識の問題は正当に解かれることが出来る。――吾々は実は、初めからこういう立場に立って語って来た、そのために吾々は予め、プレハーノフを引用してかかったのである。

 そこで吾々はもう一遍、社会人の心理[#「社会人の心理」に傍点]乃至イデオロギー[#「イデオロギー」に傍点]の概念を取り上げよう。
 吾々の社会分析の結果を仮定すれば、社会は、物質的生産関係の物質的・内的・矛盾からして、階級社会を結果する。但し一つの社会という容器の中に幾つかの階級が存在するとか、又は幾つかの階級が社会部分をなすとか、云うのではない。一社会が諸階級のどれか一つによって代表されるべく置かれていると云うのである。一つの社会に対して、この階級か又はそうではなくて[#「又はそうではなくて」に傍点]他の階級かが、自己同一化されねばならない。この際無論二つのものは相互に排撃せざるを得ない。だから、階級社会とは階級対立社会[#「階級対立社会」に傍点]――階級闘争の社会[#「階級闘争の社会」に傍点]――の外ではない。同語反覆的にそうなのである(だから幾つかの諸階級も二つの対立階級に集約される)。――さて、社会が階級をその性格とするから、社会人の心理も亦、階級によって性格づけられねばならない。吾々の見て来た最後の方法から云って之は必然的である。意識はまず第一に階級意識[#「階級意識」に傍点]――又は階級心――として性格づけられ、そういうものとして分析されなくてはならないのである。意識はそういう意識形態[#「意識形態」に傍点]として、一種の意味でのイデオロギー[#「イデオロギー」に傍点]と見られなくてはならない(吾々は意識形態としてのイデオロギーと文化形態としてのイデオロギーとを区別する。社会人の心理――階級意識――は今、前者の意味に於てイデオロギーだと云うのである)。
 階級意識の分析で最も眼立たしいのは処で、G・ルカーチであろう。だがルカーチによる階級意識とは何であったか。それは生産過程の一定の典型的な情勢に帰属せしめられる処の合理的に適合されたる[#「合理的に適合されたる」に傍点]、生産過程の反作用である。と云うのは、階級意識とは、決して、個々のプロレタリアの心理的意識でもなければ、プロレタリア全体の集団心理学的意識でもない、階級の歴史的情勢が意識された処の意味[#「意味」に傍点](Sinn)なのである。それは無論単なる擬制ではない。併しそうであるからと云って何等心理学的実在性を有つものでもない。それは実際にプロレタリア個人によって意識された意識ではなくて、プロレタリア個人によって意識されるべきである処の――実際はまだ意識されていない――「客観的な可能性」に外ならない。この客観的可能性に過ぎない階級意識を事実として現実化することによって初めて、世界の経済的危機の実践的解決も可能になる、と云うのである*。
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* 〔G. Luka'cs, Geschichte und Klassenbewusstsein, S. 62―3, 86―8, 92 etc.〕
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 だからルカーチに従えば、階級意識とは、要するにプロレタリアがもつ現実[#「現実」に傍点]の意識ではなくて、あるべき理想的な意識である。それは心理的な実在[#「心理的な実在」に傍点]から独立に理解された論理的な意味[#「論理的な意味」に傍点]の世界である。意味とはリッケルト達に従っても、成程仮構物ではないがどのような点でも存在[#「存在」に傍点]ではない。この新カント主義の意味論がマックス・ヴェーバーを通ってルカーチ
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