点]な、生物学的・実用主義的な、概念でしかない。真理概念は政治に関係づけられる代りにこの行動に関係づけられる。それ故ここで社会学的な問題となる論理は、単なる真理又は単なる虚偽としてであって、それが社会的に存在することによって或いは真理として自覚される虚偽となったり或いは虚偽として排斥される真理であったりするような、そういう社会現象[#「社会現象」に傍点]としてではない。真理はその限り全く社会的制約から遊離したものとしてしか問題になることが出来ないでいる。之が少くとも知識[#「知識」に傍点]の社会学[#「社会学」に傍点]として名誉に数えられることだろうか。イェルザレムの認識社会学は、[#傍点]真理の実際上の社会的存在[#傍点終わり]を取り扱うことが出来ない。論理の問題は実はであるからここでも亦社会学的に取り扱われ得ない。之が歴史的原理[#「歴史的原理」に傍点]を無視した結果に外ならなかったのである。――茲でも亦、知識社会学にとって、歴史の問題が同時にそれだけ論理の問題であることを、重ねて人々は気付かねばならない。
 歴史的原理と論理の問題とを、このように回避することによって、イェルザレムの認識社会学は、イデオロギー論を回避することが出来る。だが彼は何故に歴史的原理と論理の問題とを回避しなければならなかったか。事階級[#「階級」に傍点]に関わるからであった。彼にとっては、階級の代りに、個人[#「個人」に傍点]か又は人間一般[#「人間一般」に傍点](社会[#「社会」に傍点])かしかない。個人主義化[#「個人主義化」に傍点]し、やがてコスモポリタン化[#「コスモポリタン化」に傍点]すということが、人間の精神の発展なのであった。階級の這入る余地はどこに与えられているか。階級的であると同時に超階級的であったコントの知識社会学の矛盾は、このような仕方に於て――階級性を引き去ることによって――誠に能く整理される。イェルザレムの実証主義的知識社会学の承継[#「承継」に傍点]と復原[#「復原」に傍点]との秘密は茲に横たわる。

[#3字下げ]三[#「三」は小見出し]

 コントのイデオロギー論は、プロレタリアに名を借りた処の、ブルジョアジーのイデオロギー論であった。それは恰も、フランス革命が無産者農民を動員して行われた有産者的市民の革命に外ならなかったことに対応する。ブルジョアジーの成熟と共に併しながら、プロレタリアの結束が、プロレタリアのブルジョアジーからの凡ゆる方面に於ける独立が、結果する。ブルジョアジーはその時、この次第に革命的となりつつあるプロレタリアに対抗するために、是非ともみずからの曾ての革命的性格を振り落し、或いは民主主義的、或いは絶対主義的・ファシスト的な変質を遂げねばならない。反抗的であったブルジョア的イデオロギー論も、亦イデオロギー論であることを止めて、単なる知識社会学[#「単なる知識社会学」に傍点]としてみずからを性格づけねばならなかった。何となればイデオロギーなる概念は、多少とも政治的・革命的なるものとの縁を絶つことが出来ないからである。所謂――ブルジョア的――知識社会学がイデオロギー論であることを、又は其になることを、欲しないのは誠に賢明であると云わざるを得ない。
 知識社会学のこのような変質は、併しながら、であるから、プロレタリア的な知識社会学――イデオロギー論――の発生に、無意識的にか意識的にか、対応する。プロレタリア的知識社会学とは取りも直さずマルクス主義的「イデオロギー論」であった。――実際、イデオロギーと云う言葉を、今云うイデオロギー論という言葉のイデオロギーという意味に、即ち上部構造としての意識形態・乃至観念形態という意味に、初めて用いることの出来たのはマルクスその人であった*。
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* イデオロギーの概念の発生と変化とに就いては森戸辰男氏「マルクス・エンゲルスのイデオロギー観」(『大原社会問題研究所雑誌』第八冊)が好い文献である。なお、G. Salomon, Historischer Materialismus und Ideologienlehre(〔Jahrbuch fu:r Soziologie, Bd. ※[#ローマ数字2、1−13−22], 1926〕)を参照せよ。
[#ここで字下げ終わり]
 マルクス主義的社会科学が一般に所謂社会学[#「社会学」に傍点]を圧倒し牽制するように、マルクス主義的イデオロギー論――尤も正当なイデオロギー論はマルクス主義的のものでしかなかったのであるが――は所謂知識社会学[#「知識社会学」に傍点]を圧倒し牽制する。そこで知識社会学は之に反作用することによって、みずからイデオロギー論を名乗り、イデオロギー論を作らねばならなくなる。そ
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