皷梹フ象して、即ちその論理学的契機を一旦無視して、他の一つの[#「一つの」に傍点]特色、契機である処の、夫が一つの歴史的存在物だという点だけを取り出したものを、イデオロギーの社会学と呼ぼうというのである。――実際所謂社会学は後に見るように、歴史的社会的存在の価値的規定を度外視することを一貫した特色としているだろう(第二部参照)。「社会学」は事物を評価[#「評価」に傍点]することを欲しない。
イデオロギーの社会学なるものに併し、も一つの制限を加えておく必要がある。イデオロギーは、すでに述べたような色々な意味に於て社会の上部構造[#「上部構造」に傍点]であったが、上部構造という限りそれは社会の下部構造[#「下部構造」に傍点]の上部構造でなければ意味がない。そこで、イデオロギーの社会学は恰も、専らこの下部構造と上部構造との連関を明らかにすることを課題とするだろうように見える。――だが、社会の下部構造――技術的・経済的・政治的・社会的・部面――であっても、唯物史観によれば、社会の必然的な歴史的発展に於ける弁証法的[#「弁証法的」に傍点]諸契機から構成されているのであって、その限り之は論理的構造[#「論理的構造」に傍点]を有つのであるから(イデオロギーはこの論理的構造を論理的価値関係――夫が論理学[#「学」に傍点]的だ――として反映するのであった)、前のイデオロギーの論理学と雖も、矢張りイデオロギー(上部構造)と下部構造との連関を明らかにすることを課題としないではいられないのであった。だから、上部構造としてのイデオロギーを下部構造との連関に於て明らかにするのは、何もイデオロギーの社会学にだけ与えられた課題なのではない。それは本来イデオロギーの論理学の課題にぞくする。
今必要なことは、之ではなくて、イデオロギーに固有な――他の歴史的社会的諸存在から区別された――歴史的社会的構造を取り出すということなのであるが、イデオロギーに固有な歴史的社会的構造と云えば併しその精髄は論理的[#「論理的」に傍点]構造に外ならないのだが、今は却ってこうした論理的なアクセントを全く引き去って了った残留物としてのイデオロギーが有つ処の、社会的歴史的構造を取り出して、それだけ又別に[#「別に」に傍点]考えねばならない。そうしなければイデオロギーの論理学は終局的には具体化されず、イデオロギーの現実的な
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