イデオロギー概論
戸坂潤

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)框《かまち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)品|隲《しつ》する

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#ローマ数字4、1−13−24]

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔ide'ologie〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://www.aozora.gr.jp/accent_separation.html

*:注釈記号
 (底本では、直前の文字の右横に、ルビのように付く)
(例)形而上学的範疇*――
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[#1字下げ]序[#「序」は大見出し]


 私は二年あまり前に、『イデオロギーの論理学』を出版したが、今度の書物は全く、それの具体化と新しい領域への展開なのである。が、そればかりでなく、又その敷衍と平易化とでもあることを願っている。
 イデオロギーの問題が、一般社会から云っても又階級的に云っても、至極重大な客観的な意味を有っていることを、今更口にする必要はないであろう。併しこの問題は世間の人々が想像しているように、それ程決って了った問題でもなければ、又充分に検討し尽されつつある問題だとさえも云えない。それは甚だ多くの未知のものを吾々に約束しているように見える。私はそこで、事物をイデオロギー論的に[#「イデオロギー論的に」に傍点]取り扱うための基本的な計画を立てて見ることにした。それがこの書物である。
 だから私にとって、イデオロギーの問題は単に一つの顕著な大事な問題というだけではなく、可なりの広範さと普遍さとを有った原理的な[#「原理的な」に傍点]問題として現われる。この書物は単に読者にとっての手引きであるばかりでなく、又著者自身の科学的労作にとっての入門書なのである。それで今の場合、イデオロギーに関する歴史的叙述に立ち入る余裕がなかったのは遺憾である。
 第二部の批判的な各章は以前発表したものを元にし、之を短かくし且つ訂正したものである。併しこの各章が、単なる批判[#「批判」に傍点]ではなくて、実は夫々一定の公式[#「公式」に傍点]を導き出すためのものだという点を、注意して欲しい。
 一
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