じゃったのう。」
 「はあ、今日《きょう》は、なんです、加藤へ寄りますとね、赤坂へ行くならちょうどいいからいっしょに行こうッて言いましてな、加藤さんも伯母《おば》さんもそれから千鶴子《ちずこ》さんも、総勢五人で出かけたのです。赤坂でも非常の喜びで、幸い客はなし、話がはずんで、ついおそくなってしまったのです――ああ酔った」と熟せる桃のごとくなれる頬《ほお》をおさえつ、小間使いが持て来し茶をただ一息に飲みほす。
 「そうかな。そいはにぎやかでよかったの。赤坂でもお変わりもないじゃろの、浪どん?」
 「はい、よろしく申し上げます、まだ伺いもいたしませんで、……いろいろお土産《みや》をいただきまして、くれぐれお礼申し上げましてございます」
 「土産《みやげ》といえば、浪さん、あれは……うんこれだ、これだ」と浪子がさし出す盆を取り次ぎて、母の前に差し置く。盆には雉子《きじ》ひとつがい、鴫《しぎ》鶉《うずら》などうずたかく積み上げたり。
 「御猟の品かい、これは沢山に――ごちそうがでくるの」
 「なんですよ、母《おっか》さん、今度は非常の大猟だったそうで、つい大晦日《おおみそか》の晩に帰りなすった
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