》っての心細さ、たよりなさを覚えているほどの姑、義理にも嫁をいじめられるものでなけれど、そこは凡夫《ぼんぷ》のあさましく、花嫁の花落ちて、姑と名がつけば、さて手ごろの嫁は来るなり、わがままも出て、いつのまにかわがつい先年まで大の大の大きらいなりし姑そのままとなるものなり。「それそれその衽《おくみ》は四寸にしてこう返して、イイエそうじゃありません、こっちよこしなさい、二十歳《はたち》にもなッて、お嫁さまもよくできた、へへへへ」とあざ笑う声から目つき、われも二十《はたち》の花嫁の時ちょうどそうしてしかられしが、ああわれながら恐ろしいとはッと思って改むるほどの姑はまだ上の上、目にて目を償い、歯にて歯を償い、いわゆる江戸の姑のその敵《かたき》を長崎の嫁で討《う》って、知らず知らず平均をわが一代のうちに求むるもの少なからぬが世の中。浪子の姑もまたその一人《ひとり》なりき。
 西洋流の継母に鍛われて、今また昔風の姑に練《ね》らるる浪子。病める老人《としより》の用しげく婢《おんな》を呼ばるるゆえ、しいて「わたくしがいたしましょう」と引き取ってなれぬこととて意に満たぬことあれば、こなたには礼を言いてわ
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