入ったとのたまいしも、添って見てげにと思い当たりぬ。鷹揚《おうよう》にして男らしく、さっぱりとして情け深く寸分|鄙吝《いや》しい所なき、本当に若いおとうさまのそばにいるような、そういえば肩を揺すってドシドシお歩きなさる様子、子供のような笑い声までおとうさまにそっくり、ああうれしいと浪子は一心にかしずけば、武男も初めて持ちし妻というものの限りなくかわゆく、独子《ひとりご》の身は妹まで添えて得たらん心地《ここち》して「浪さん、浪さん」といたわりつ。まだ三月に足らぬ契りも、過ぐる世より相知れるように親しめば、しばしの別離《わかれ》もかれこれともに限りなき傷心の種子《たね》とはなりけるなり。さりながら浪子は永《なが》く別離《わかれ》を傷《いた》む暇なかりき。武男が出発せし後ほどもなく姑が持病のリュウマチスはげしく起こりて例の癇癪《かんしゃく》のはなはだしく、幾を実家《さと》へ戻せし後は、別して辛抱の力をためす機会も多かりし。
新入の学生、その当座は故参のためにさんざんにいじめられるれど、のちにはおのれ故参になりて、あとの新入生をいじめるが、何よりの楽しみなりと書きし人もありき。綿帽子|脱《と
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