「あんた、そないな戯談《じょうだん》どころじゃございませんがな。――でもかあいそうや、ほんまにかあいそうや、今日もな、あんた、竹《たけ》にそういいましたてね。ほんまに憎らしい武男はんや、ひどいひどいひどいひどい人や、去年のお正月には靴下《くつした》を編んであげたし、それからハンケチの縁を縫ってあげたし、それからまだ毛糸の手袋だの、腕ぬきだの、それどころか今年の御年始には赤い毛糸でシャツまで編んであげたに、皆《みいな》自腹ア切ッて編んであげたのに、何《なアん》の沙汰《さた》なしであの不器量な意地《いじ》わるの威張った浪子はんをお嫁にもらったり、ほんまにひどい人だわ、ひどいわひどいわひどいわひどいわ、あたしも山木の女《むすめ》やさかい、浪子はんなんかに負けるものか、ほんまにひどいひどいひどいひどいッてな、あんた、こないに言って泣いてな。そないに思い込んでいますに、あああ、どうにかしてやりたいがな、あんた」
 「ばかを言いなさい。勇将の下《もと》に弱卒なし。御身《おまえ》はさすがに豊が母《おっか》さんだよ。そらア川島だッて新華族にしちゃよっぽど財産もあるし、武男さんも万更《まんざら》ば
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