ざいましたよ。殿様が負《おん》ぶ遊ばしますと、少嬢様《ちいおじょうさま》がよくおむずかり遊ばしたンでございますね。――ただ今もどんなにおうらやましがっていらッしゃるかもわかりませんでございますよ」と気軽に幾が相槌《あいづち》うちぬ。
浪子はたださびしげにほほえみつ。
「駒《こま》か。駒にはおわびにどっさり土産《みやげ》でも持って[#底本では「持つて」と誤植]行くじゃ。なあ、浪。駒よか千鶴さんがうらやましがっとるじゃろう、一度こっちに来たがっておったのじゃから」
「さようでございますよ。加藤《あちら》のお嬢様がおいで遊ばしたら、どんなにおにぎやかでございましょう。――本当に私《わたくし》なぞがまあこんな珍しい見物さしていただきまして――あの何でございますか、さっき渡りましたあの川が宇治川で、あの螢《ほたる》の名所で、ではあの駒沢《こまざわ》が深雪《みゆき》にあいました所でございますね」
「はははは、幾はなかなか学者じゃの。――いや世の中の移り変わりはひどいもンじゃ。おとうさんなぞが若かった時分は、大阪《おおさか》から京へ上るというと、いつもあの三十石で、鮓《すし》のごと詰められた
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