あや》の洋傘《パラソル》をかざし、そのあとより五十あまりの婢《おんな》らしきが信玄袋をさげて従いたり。
 三人《みたり》の出《い》で来たるとともに、門前に待ち居し三|輛《りょう》の車がらがらと引き来るを、老紳士は洋傘《パラソル》の淑女を顧みて
 「いい天気じゃ。すこし歩いて見てはどうか」
 「歩きましょう」
 「お疲れは遊ばしませんか」と婢《おんな》は口を添えつ。
 「いいよ、少しは歩いた方が」
 「じゃ疲れたら乗るとして、まあぶらぶら歩いて見るもいいじゃろう」
 三輛の車をあとに従えつつ、三人はおもむろに歩み初めぬ。いうまでもなく、こは片岡中将の一行なり。昨日《きのう》奈良《なら》より宇治に宿りて、平等院を見、扇の芝の昔を弔《とむら》い、今日《きょう》は山科《やましな》の停車場より大津《おおつ》の方《かた》へ行かんとするなり。
 片岡中将は去《さんぬ》る五月に遼東より凱旋しつ。一日浪子の主治医を招きて書斎に密談せしが、その翌々日より、浪子を伴ない、婢《ひ》の幾を従えて、飄然《ひょうぜん》として京都に来つ。閑静なる河《かわ》ぞいの宿をえらみて、ここを根拠地と定めつつ、軍服を脱ぎすてて平
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