ま、あなた、思わずいったその声にふッと目がさめて、あたりを見るとだれもいません。行燈の火がとろとろ燃えて、悴はすやすや眠っています。もうすっかり汗になりまして、動悸《どうき》がはげしくうって――
その翌日から悴は急にわるくなりまして、とうとうその夕刻に息を引き取りましてね。もう夢のようになりましてその骸《からだ》を抱いているうちに、着いたのが良人が討死《うちじに》の電報《しらせ》でした」
話者は口をつぐみ、聴者は息をのみ、室内しんとして水のごとくなりぬ。
やや久しゅうして、老婦人は再び口を開けり。
「それから一切夢中でしてね、日と月と一時に沈《い》ったと申しましょうか、何と申しましょうか、それこそほんにまっ暗になりまして、辛抱に辛抱して結局《つまり》がこんな事かと思いますと、いっそこのままなおらずに――すぐそのあとで臥病《わずらい》ましたのですよ――と思ったのですが、幸《しあわせ》か不幸《ふしあわせ》か病気はだんだんよくなりましてね。
病気はよくなったのですが、もう私には世の中がすっかり空虚《から》になったようで、ただ生きておるというばかりでした。そうするうちに、知己《しるべ
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