いたします、悴は大きくなりまして、私もよほど楽になったのですが、ただ気をもみましたのは、良人の大酒《たいしゅ》――軍人は多くそうですが――の癖でした。それから今でもやはりそうですが、そのころは別してね、男子《おとこ》の方《かた》が不行跡で、良人なんぞはまあ西洋にもまいりますし、少しはいいのでしたが、それでも恥ずかしい事ですが、私も随分心配をいたしました。それとなく異見をしましても、あなた、笑って取り合いませんのですよ。
 そうするうちにあの十年の戦争になりまして、良人――近衛《このえ》の大佐でした――もまいります。そのあとに悴が猩紅熱《しょうこうねつ》で、まあ日夜《ひるよる》つきッきりでした。四月十八日の夜《ばん》でした、悴が少しいい方でやすんでいますから、婢《おんな》なぞもみんな寝せまして、私は悴の枕もとに、行燈《あんどう》の光で少し縫い物をしていますと、ついうとうといたしましてね。こう気が遠《とおー》くなりますと、すうと人の来る気《け》はいがいたして、悴の枕もとにすわる者があるのです。たれかと思って見ますと、あなた、良人です、軍服のままで、血だらけになりまして、蒼《あお》ざめて――
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