やかなれば、見たる所は目より鼻にぬけるほど華手《はで》には見えねど、不なれながらもよくこちの気を飲み込みて機転もきき、第一心がけの殊勝なるを、図に乗っては口ぎたなくののしりながら、心の底にはあの年ごろでよく気がつくと暗に白状せしこともありしが、今目の前に同じ年ごろのお豊を置きて見れば、是非なく比較はとれて、事ごとに思うまじと思う人を思えるなり。されば日々《にちにち》気にくわぬ事の出《い》で来るごとに、春がすみの化けて出《い》でたる人間の名をお豊と呼ばれて目は細々と口も閉じあえずすわれるかたわらには、いつしか色少し蒼《あお》ざめて髪黒々としとやかなる若き婦人《おんな》の利発らしき目をあげてつくづくとわが顔をながめつつ「いかがでございます?」というようなる心地《ここち》して武男が母は思わずもわななかれつ。「じゃって、病気をすっがわるかじゃなっか」と幾たびか陳弁《いいわけ》すれど、なお妙に胸先《むなさき》に込みあげて来るものを、自己《おのれ》は怒りと思いつつ、果てはまた大声あげて、お豊に当たり散らしぬ。
 されば、広島の旗亭に、山木が田崎に向かいて娘お豊を武男が後妻《こうさい》にとおぼろげな
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