《さ》いて白波《はくは》高く両舷にわきぬ。将校あるいは双眼鏡をあげ、あるいは長剣の柄《つか》を握りて艦橋の風に向かいつつあり。
 はるかに北方の海上を望めば、さきに水天の間に一髪の浮かめるがごとく見えし煙は、一分一分に肥え来たりて、敵の艦隊さながら海中よりわき出《い》づるごとく、煙まず見え、ついで針大《はりだい》の檣《ほばしら》ほの見え、煙突見え、艦体見え、檣頭の旗影また点々として見え来たりぬ。ひときわすぐれて目立ちたる定遠《ていえん》鎮遠《ちんえん》相連《あいなら》んで中軍を固め、経遠《けいえん》至遠《しえん》広甲《こうこう》済遠《さいえん》は左翼、来遠《らいえん》靖遠《せいえん》超勇《ちょうゆう》揚威《ようい》は右翼を固む。西に当たってさらに煙《けぶり》の見ゆるは、平遠《へいえん》広丙《こうへい》鎮東《ちんとう》鎮南《ちんなん》及び六隻の水雷艇なり。
 敵は単横陣を張り、我艦隊は単縦陣をとって、敵の中央《まなか》をさして丁字形に進みしが、あたかも敵陣を距《さ》る一万メートルの所に至りて、わが先鋒隊《せんぽうたい》はとっさに針路を左に転じて、敵の右翼をさしてまっしぐらに進みつ。先鋒の
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