そらア無理ゃないわ。遠方にいらっしたンだもの。だれだって、下女《おんな》じゃあるまいし、肝心な子息《むすこ》に相談もしずに、さっさと※[#「※」は「おんなへん+息」、第4水準2−5−70、139−8]《よめ》を追い出してしまおうた思わないわね。それに旦那様もお年が若いからねエ。ほんとに旦那様もおかあいそう――奥様はなおおかあいそうだわ。今ごろはどうしていらッしゃるだろうねエ。ああいやだ――ほウら、婆《ばば》あが怒鳴りだしたよ。松ちゃんせッせとしないと、また八つ当たりでおいでるよ」
 奥の一間には母子の問答次第に熱しつ。
 「だッて、あの時あれほど申し上げて置いたです。それに手紙一本くださらず、無断で――実にひどいです。実際ひどいです。今日もちょいと逗子に寄って来ると、浪はおらんでしょう、いくに尋ねると何か要があって東京に帰ったというです。変と思ったですが、まさか母《おっか》さんがそんな事を――実にひどい――」
 「それはわたしがわるかった。わるかったからこの通り親がわびをしておるじゃなッかい。わたしじゃッて何も浪が悪《にく》かというじゃなし、卿《おまえ》がかあいいばッかいで――」
 「
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