》を出《い》でし日別れの訓戒《いましめ》を聞きし時そのままに、浪子はひざまずきて父の膝《ひざ》にむせび、中将は咳《せ》き入る女《むすめ》の背《せな》をおもむろになでおろしつ。
十
「号外! 号外! 朝鮮事件の号外!」と鈴《りん》の音のけたたましゅう呼びあるく新聞売り子のあとより、一|挺《ちょう》の車がらがらと番町なる川島家の門に入りたり。武男は今しも帰り来たれるなり。
武男が帰らば立腹もすべけれど、勝ちは畢竟《ひっきょう》先《せん》の太刀《たち》、思い切って武男が母は山木が吉報をもたらし帰りしその日、善は急げと※[#「※」は「おんなへん+息」、第4水準2−5−70、138−7]《よめ》が箪笥《たんす》諸道具一切を片岡家に送り戻し、ちと殺生ではあったれど、どうせそのままには置かれぬ腫物《はれもの》、切ってしまって安心とこの二三日近ごろになき好機嫌《こうきげん》のそれに引きかえて、若夫婦|方《がた》なる僕婢《めしつかい》は気の毒とも笑止ともいわん方《かた》なく、今にもあれ旦那《だんな》がお帰りなさらば、いかに孝行の方《かた》とて、なかなか一通りでは済むまじとはらはら思って
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