ばすンでございましょう?」
「いいえね、あちでも――医師《いしゃ》も待ってたし、暮れないうちがいいから、すぐ今度の汽車で、ね」
「へエー!」
姥《ばあ》は驚きたるなり。浪子も腑《ふ》に落ちぬ事はあれど、言うは伯母なり、呼ぶは父なり、姑《しゅうと》は承知の上ともいえば、ともかくもいわるるままに用意をば整えつ。
「伯母様何を考え込んでいらッしゃるの? ――看護婦は行かなくもいいでしょうね、すぐ帰るのでしょうから」
伯母は起《た》ちて浪子の帯を直し襟《えり》をそろえつつ「連れておいでなさいね、不自由ですよ」
*
四時ごろには用意成りて、三|挺《ちょう》の車門に待ちぬ。浪子は風通御召《ふうつうおめし》の単衣《ひとえ》に、御納戸色繻珍《おなんどいろしゅちん》の丸帯して、髪は揚巻《あげまき》に山梔《くちなし》の花一輪、革色《かわいろ》の洋傘《かさ》右手《めて》につき、漏れ出《い》づるせきを白綾《しろあや》のハンカチにおさえながら、
「ばあや、ちょっと行って来るよ。あああ、久しぶりに帰京《かえ》るのね。――それから、あの――お単衣《ひとえ》ね、もすこしだけども――あ、いい
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