して車を片岡家に走らせ、ここに初めて川島家の使者が早くも直接談判に来たりて、すでに中将の承諾を得て去りたる由を聞きつ。武男を待つの企ても今はむなしくなりて、かつ驚きかつ嘆きしが、せめては姪《めい》の迎え(手放し置きて、それと聞かさば不慮の事の起こりもやせん、とにかく膝下《しっか》に呼び取って、と中将は慮《おもんばか》れるなり)にと、すぐその足にて逗子には来たりしなり。
「まあ。よく……ちょうど今うわさをしてましたの」
「本当によくまあ……いかがでございます、奥様、ばあやが言《こと》は当たりましてございましょう」
「浪さん、あんばいはどうです? もうあれから何も変わった事もないのかい?」
と伯母の目はちょっと浪子の面《おもて》をかすめて、わきへそれぬ。
「は、快方《いいほう》ですの。――それよりも伯母様はどうなすッたの。たいへんに顔色《おいろ》が悪いわ」
「わたしかい、何ね、少し頭痛がするものだから。――時候のせいだろうよ。――武男さんから便《たより》がありましたか、浪さん?」
「一昨日《おととい》、ね、函館から。もう近々《ちかぢか》に帰りますッて――いいえ、何日《なんち》
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