かまわンか、川島家はつぶしてもええかい?」
「母《おっか》さんはわたしのからだばッかりおっしゃるが、そんな不人情な不義理な事して長生きしたッてどうしますか。人情にそむいて、義理を欠いて、決して家のためにいい事はありません。決して川島家の名誉でも光栄でもないです。どうでも離別はできません、断じてできないです」
難関あるべしとは期《ご》しながら思いしよりもはげしき抵抗に出会いし母は、例の癇癖《かんぺき》のむらむらと胸先《むなさき》にこみあげて、額のあたり筋立ち、こめかみ顫《うご》き、煙管持つ手のわなわなと震わるるを、ようよう押ししずめて、わずかに笑《えみ》を装いつ。
「そ、そうせき込まんでも、まあ静かに考えて見なさい。卿《おまえ》はまだ年が若かで、世間《よのなか》を知ンなさらンがの、よくいうわ、それ、小の虫を殺しても大の虫は助けろじゃ。なあ。浪は小の虫、卿《おまえ》――川島家は大の虫じゃ、の。それは先方《むこう》も気の毒、浪もかあいそうなよなものじゃが、病気すっがわるかじゃなッか。何と思われたて、川島家が断絶するよかまだええじゃなッか、なあ。それに不義理の不人情の言いなはるが、こんな
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