「病気のなかでもこの病気ばかいは恐ろしいもンでな、武どん。卿《おまえ》も知っとるはずじゃが、あの知事の東郷《とうごう》、な、卿《おまえ》がよくけんかをしたあの児《こ》の母御《かさま》な、どうかい、あの母《ひと》が肺病で死んでの、一昨年《おととし》の四月じゃったが、その年の暮れに、どうかい、東郷さんもやっぱい肺病で死んで、ええかい、それからあの息子《むすこ》さん――どこかの技師をしとったそうじゃがの――もやっぱい肺病でこのあいだ亡くなッた、な。みいな母御《かさま》のがうつッたのじゃ。まだこんな話が幾つもあいます。そいでわたしはの、武どん、この病気ばかいは油断がならん、油断をすれば大事じゃと思うッがの」
母は煙管をさしおきて、少し膝《ひざ》をすすめ、黙して聞きおれる武男の横顔をのぞきつつ
「実はの、わたしもこの間から相談したいしたい思っ居《お》い申したが――」
少し言いよどんで、武男の顔しげしげとみつめ、
「浪じゃがの――」
「はあ?」
武男は顔をあげたり。
「浪を――引き取ってもろちゃどうじゃろの?」
「引き取る? どう引き取るのですか」
母は武男の顔より目をはなさず
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