母|様《さん》もやっと御安心なさると、すぐこんな事になって――しかし川島家の存亡は実に今ですね――ところでお浪さんの実家《さと》からは何か挨拶《あいさつ》がありましたでしょうな」
 「挨拶、ふん、挨拶、あの横柄《おうへい》な継母《かか》が、ふんちっとばかい土産《みやげ》を持っての、言い訳ばかいの挨拶じゃ。加藤の内《うち》から二三度、来は来たがの――」
 千々岩は再び大息《たいそく》しつ。「こんな時にゃ実家《さと》からちと気をきかすものですが、病人の娘を押し付けて、よくいられるですね。しかし利己主義が本尊の世の中ですからね、叔母|様《さん》」
 「そうとも」
 「それはいいですが、心配なのは武男君の健康です。もしもの事があったらそれこそ川島家は破滅です、――そういううちにもいつ伝染しないとも限りませんよ。それだって、夫婦というと、まさか叔母|様《さん》が籬《かき》をお結いなさるわけにも行きませんし――」
 「そうじゃ」
 「でも、このままになすっちゃ川島家の大事になりますし」
 「そうとも」
 「子供の言うようにするばかりが親の職分じゃなし、時々は子を泣かすが慈悲になることもありますし、
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