ろもち》はどんなでしょうねエ。でも乗ってる人を思いやる人はなお悲しいわ!」
「なあに」と武男は茶をすすり果てて風月の唐饅頭《とうまんじゅう》二つ三つ一息に平らげながら「なあに、これくらいの風雨《しけ》はまだいいが、南シナ海あたりで二日も三日も大暴風雨《おおしけ》に出あうと、随分こたえるよ。四千何百トンの艦《ふね》が三四十度ぐらいに傾いてさ、山のようなやつがドンドン甲板《かんぱん》を打ち越してさ、艦《ふね》がぎいぎい響《な》るとあまりいい心地《こころもち》はしないね」
風いよいよ吹き募りて、暴雨一陣|礫《つぶて》のごとく雨戸にほとばしる。浪子は目を閉じつ。いくは身を震わしぬ。三人《みたり》が語《ことば》しばし途絶えて、風雨の音のみぞすさまじき。
「さあ、陰気な話はもう中止だ。こんな夜《ばん》は、ランプでも明るくして愉快に話すのだ。ここは横須賀よりまた暖かいね、もうこんなに山桜が咲いたな」
浪子は磁瓶《じへい》にさしし桜の花びらを軽《かろ》くなでつつ「今朝《けさ》老爺《じいや》が山から折って来ましたの。きれいでしょう。――でもこの雨風で山のはよっぽど散りましょうよ。本当にどうしてこ
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