ほうびに、今いいお菓子がまいりますよ」
「それはごちそうさま。大方お千鶴さんの土産《みやげ》だろう。――それは何かい、立派な物ができるじゃないか」
「この間から日が永《なが》くッてしようがないのですから、おかあさまへ上げようと思ってしているのですけど――イイエ大丈夫ですわ、遊び遊びしてますから。ああ何だか気分が清々《せいせい》したこと。も少し起きさしてちょうだいな、こうしてますとちっとも病気のようじゃないでしょう」
「ドクトル川島がついているのだもの、はははは。でも、近ごろは本当に浪さんの顔色がよくなッた。もうこっちのものだて」
この時次の間よりかの老女のいくが、菓子|鉢《ばち》と茶盆を両手にささげ来つ。
「ひどい暴風雨《しけ》でございますこと。旦那《だんな》様がいらッしゃいませんと、ねエ奥様、今夜《こんばん》なんざとても目が合いませんよ。飯田町《いいだまち》のお嬢様はお帰京《かえり》遊ばす、看護婦さんまで、ちょっと帰京《かえり》ますし、今日はどんなにさびしゅうございましてしょう、ねエ奥様。茂平《もへい》(老僕)どんはいますけれども」
「こんな晩に船に乗ってる人の心地《ここ
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