、それはおかしいの。それからね、わたしがまぜッかえしてやったら、お千鶴さんはまだ門外漢――漢がおかしいわ――だから話せないというのですよ。――すこしつまり過ぎはしないの?」
 「イイエ。――それはおもしろかったでしょう。ほほほほ、みんな自己《じぶん》から割り出すのね。どうせ局々《ところところ》で違うのだから、一概には言えないのでしょうよ。ねエ、お千鶴さん。伯母様もいつかそうおっしゃったでしょう。若い者ばかりじゃわがままになるッて、本当にそうですよ、年寄りを疎略に思っちゃ済まないのね」
 父中将の教えを受くるが上に、おのずから家政に趣味をもてる浪子は、実家《さと》にありけるころより継母の政《まつりごと》を傍観しつつ、ひそかに自家の見《けん》をいだきて、自ら一家の女主《あるじ》になりたらん日には、みごと家を斉《ととの》えんものと思えるは、一日にあらざりき。されど川島家に来たり嫁ぎて、万機一に摂政太后の手にありて、身はその位《くらい》ありてその権なき太子妃の位置にあるを見るに及びて、しばしおのれを収めて姑の支配の下《もと》に立ちつ。親子の間に立ち迷いて、思うさま良人《おっと》にかしずくことの
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