」
「まあきれい、一ツむいてちょうだいな」
千鶴子がむいて渡すを、さもうまげに吸いて、額《ひたえ》にこぼるる髪をかき上げ、かき上げつ。
「うるさいでしょう。ざっと結《い》ってた方がよかないの? ね、ちょっと結いましょう。――そのままでいいわ」
勝手知ったる次の間の鏡台の櫛《くし》取り出《いだ》して、千鶴子は手柔らかにすき始めぬ。
「そうそう、昨日の同窓会――案内状《しらせ》が来たでしょう――はおもしろかってよ。みんながよろしくッて、ね。ほほほほ、学校を下がってからまだやっと一年しかならないのに、もう三一はお嫁だわ。それはおかしいの、大久保《おおくぼ》さんも本多《ほんだ》さんも北小路《きたこうじ》さんもみんな丸髷《まるまげ》に結《い》ってね、変に奥様じみているからおかしいわ。――痛かないの?―ほほほほ、どんな話かと思ったら、みんな自分の吹聴《ふいちょう》ですわ。そうそう、それから親子別居論が始まってね、北小路さんは自分がちっとも家政ができないに姑《おっかさん》がたいへんやさしくするものだから同居に限るっていうし、大久保さんはまた姑《おっかさん》がやかましやだから別居論の勇将だし
前へ
次へ
全313ページ中115ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング