こ》同士。幼稚園に通うころより実の同胞《きょうだい》も及ばぬほど睦《むつ》み合いて、浪子が妹の駒子《こまこ》をして「姉《ねえ》さんはお千鶴さんとばかり仲よくするからわたしいやだわ!」といわしめしこともありき。されば浪子が川島家に嫁《とつ》ぎて来し後も、他の学友らはおのずから足を遠くせしに引きかえ、千鶴子はかえってその家の近くなれるを喜びつつ、しばしば足を運べるなり。武男が遠洋航海の留守の間心さびしく憂《う》き事多かる浪子を慰めしは、燃ゆるがごとき武男の書状を除きては、千鶴子の訪問ぞその重《おも》なるものなりける。
 浪子はほほえみて、
 「今日はよっぽどよい方だけども、まだ頭《かみ》が重くて、時々せきが出て困るの」
 「そう?――寒いのね」うやうやしく座ぶとんをすすむる婢《おんな》をちょっと顧みて、浪子のそば近くすわりつ。桐胴《きりどう》の火鉢《ひばち》に指環《ゆびわ》の宝石きらきらと輝く手をかざしつつ、桜色ににおえる頬《ほお》を押《おさ》う。
 「伯母様も、伯父様も、おかわりないの?」
 「あ、よろしくッてね。あまり寒いからどうかしらッてひどく心配していなさるの、時候が時候だから、少
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