寺の石門《せきもん》は南面して正に宇治の急流《きゅうりゅう》に対して居る。岩を截《き》り開いた琴阪とか云う嶝道《とうどう》を上って行く。左右の崖《がけ》から紅に黄に染みた槭《もみじ》が枝をさしのべ落葉を散らして、頭上は錦《にしき》、足も錦を踏んで行く。一丁も上って唐風《からふう》の小門に来た。此処から来路《らいろ》を見かえると、額縁《がくぶち》めいた洞門《どうもん》に劃《しき》られた宇治川の流れの断片が見える。金剛不動の梵山《ほんざん》に趺座《ふざ》して、下界|流転《るてん》の消息は唯一片、洞門を閃《ひら》めき過ぐる川水の影に見ると云う趣。心憎《こころにく》い結構の寺である。
 ※[#「士/冖/石/木」、第4水準2−15−30]駝師《うえきや》が剪裁《せんさい》の手を尽した小庭を通って、庫裡《くり》に行く。誰も居ない。尾の少し欠《か》けた年《とし》古《ふ》りた木魚と小槌《こづち》が掛けてある。二つ三つたゝいたが、一向出て来ぬ。四つ五つ破《わ》れよと敲《たた》く。無作法の響《おと》がやっと奥に通じて、雛僧《すうそう》が一人出て来た。別に宝物《ほうもつ》を見るでもなく、記念に画はがきなど買
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