子をあけると、宇治の早瀬《はやせ》に九日位の月がきら/\砕《くだ》けて居る。ピッ/\ピッ/\千鳥《ちどり》が鳴《な》いて居る。
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朝起きて顔を洗うと、余は宿の褞袍《どてら》を引かけ、一同は旅の着物になって、茶ものまず見物に出かけた。宇治橋は雪の様な霜《しも》だ。ザクリ/\下駄の二の字のあとをつけて渡る。昔|太閤様《たいこうさま》は此処から茶の水を汲ませたものだ、と案内者の口まねをしつゝ、彼出張った橋の欄間《らんま》によりかゝって見下ろす。矢を射る如き川面《かわづら》からは、真白に水蒸気が立って居る。今も変らぬ柴舟《しばぶね》が、見る/\橋の下を伏見《ふしみ》の方へ下って行く。朝日山から朝日が出かゝった。橋を渡ってまだ戸を開けたばかりの通円茶屋《つうえんぢゃや》の横手から東へ切れ込み、興聖寺《こうしょうじ》の方に歩む。美しい黄の色が眼を射ると思えば、小さな店に柚子《ゆず》が小山と積んである。何と云う種類《しゅるい》か知らぬが、朱欒《ざぼん》程もある大きなものだ。旅先《たびさき》ながら看過《みすご》し難くて、二銭五厘宛で五個買い、万碧楼に届けてもらう。
興聖
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