みみずのたはこと
徳冨健次郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)儂《わし》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)二千|余坪《よつぼ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「木+要」、第4水準2−15−13]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)近来ます/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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   故人に

       一

 儂《わし》の村住居《むらずまい》も、満六年になった。暦《こよみ》の齢《とし》は四十五、鏡を見ると頭髪《かみ》や満面の熊毛に白いのがふえたには今更《いまさら》の様に驚く。
 元来田舎者のぼんやり者だが、近来ます/\杢兵衛《もくべえ》太五作式になったことを自覚する。先日上野を歩いて居たら、車夫《くるまや》が御案内しましょうか、と来た。銀座日本橋あたりで買物すると、田舎者扱いされて毎々腹を立てる。後《あと》でぺろり舌を出されるとは知りながら、上等のを否《いや》極
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