てゝ薄桃色に禿《は》げた※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]冠山を眺め、湖水の括《くく》れて川となるあたりに三上山《みかみやま》の蜈蚣《むかで》が這《は》い渡る様な瀬田の橋を眺め、月の時を思うて良《やや》久《ひさ》しく立去りかねた。
秋の日は用捨なく傾《かたむ》いた。今夜は宇治ときめたので、余等は山を下ると、川畔《かわばた》の宿にも憩《いこ》わず、車を雇うた。二人乗《ににんのり》が二台。最早上方でなければ滅多に二人乗は見られぬ。姉妹は生れてはじめてである。
姉妹を乗せた車は先きに、余等三人を乗せた車は之につゞいて、瀬田川《せたがわ》の岸に沿《そ》いつゝ平な道を馬場の方へ走る。日は入りかけて、樺色《かばいろ》に※[#「「燻」の「火」に代えて「日」」、第3水準1−85−42]《くん》じた雲が一つ湖天に浮《う》いて居る。湖畔の村々には夕けぶりが立ち出した。鴉《からす》が鳴く。粟津《あわづ》に来た時は、並樹の松に碧《あお》い靄《もや》がかゝった。
「此れがねえ、木曾《きそ》義仲《よしなか》が討死した粟津が原です」
と余は大きな声して先きの車を呼んだ。ふりかえった姉妹の顔も、唯ぼんやり
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