丁度八年前の此月である。今朝鮮に居る義兄と、余は同車して唐崎の松に往った。彼は夫婦仲好の呪《まじない》と云って誰でも探すと笑いつゝ、松に攀《よ》じ上り、松葉の二|対《つい》四本一頭に括《くく》り合わされたのを探し出してくれた。それから車で大津に帰り、小蒸汽で石山に往って、水際《みぎわ》の宿で鰉《ひがい》と蜆《しじみ》の馳走になり、相乗車で義仲寺《ぎちゅうじ》に立寄って宿に帰った。秋雨《あきさめ》の降ったり止んだり淋しい日であった。
 斯様《こん》な事を彼が妹なる妻に話す間に、小蒸汽は汽笛を鳴らしつゝ湖水を滑べって、何時見ても好い水から湧いて出た様な膳所《ぜぜ》の城を掠《かす》め、川となるべく流れ出した湖《みずうみ》の水と共に鉄橋をくゞり、瀬田《せた》の長橋を潜《くぐ》り、石山の埠頭《はとば》に着いた。
 手荷物を水畔《すいはん》の宿に預けて、石山の石に靴や下駄の音をさせつゝ、余等は石を拾《ひろ》い、紅葉を拾いつゝ、石山寺に詣《まい》った。うど闇《くら》い内陣の宝物も見た。源氏之間《げんじのま》は嘘でも本当にして置きたい様な処であった。余等は更に観月堂《かんげつどう》に上った。川を隔
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