》の冠《かむり》を見る様に一寸青黒い頭《あたま》の上の頭をかぶった愛宕山《あたごやま》が、此辺一帯の帝王|貌《がお》して見下ろして居る。御室《おむろ》でしばらく車を下りる。株立ちの矮《ひく》い桜は落葉し尽して、からんとした中に、山門《さんもん》の黄が勝った丹塗《にぬり》と、八分の紅を染めた楓《もみじ》とが、何とも云えぬ趣《おもむき》をなして居る。余は御室が大好きである。直ぐ向うのならびが岡の兼好《けんこう》が書いた遊びずきの法師達が、児《ちご》を連れて落葉に埋《うず》めて置いた弁当を探して居やしないか、と見廻《みま》わしたが、人の影はなくて、唯小鳥の囀《さえず》る声ばかりした。
 車は走せて梅が畑へ来た。柴車《しばぐるま》を挽《ひ》いて来るおばさんも、苅田《かりた》をかえして居る娘も、木綿着ながらキチンとした身装《みなり》をして、手甲《てっこう》かけて、足袋はいて、髪は奇麗《きれい》に撫《な》でつけて居る。労働が余所目《よそめ》に美しく見られる。日あたり風あたりが暴《あら》く、水も荒く、軽い土が耳の中鼻の中まで舞《ま》い込《こ》む余の住む武蔵野の百姓女なぞは中々、斯《こ》う美しくはして
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