出来ないのである。
 鹿の角を沢山|背負《せお》うて来る男に会うた。茶路川《ちゃろかわ》の水|涸《か》れた川床が左に見えて来た。
 二里も来たかと思う頃、路は殆《ほと》んど直角に右に折れて居る。最早《もう》茶路の入口だ。路傍に大きな草葺の家がある。
「一寸休んで往きましょうかな」と云って、案内者が先に立って入る。
 大きな炉《ろ》をきって、自在《じざい》に大薬罐の湯がたぎって居る。煤《すす》けた屋根裏からつりさげた藁苞《わらつと》に、焼いた小魚《こざかな》の串《くし》がさしてある。柱には大きなぼン/\が掛《かか》って居る。広くとった土間の片隅は棚になって、茶碗《ちゃわん》、皿《さら》、小鉢《こばち》の類《るい》が多くのせてある。
 額の少し禿げた天神髯《てんじんひげ》の五十位の男が出て来た。案内者と二三の会話がある。
「茶路は誰を御訪《おたず》ねなさるンですかね」
 余はMの名を云った。
「あ、Mさんですか。Mさんなれば最早茶路には居ません。昨年越しました。今は釧路に居ます。釧路の西幣舞町《にしぬさまいまち》です。葬儀屋《そうぎや》をやってます。エ、エ、俺《わたし》とは極《ごく》懇意《
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