《もう》月が出て、沼の水に螢《ほたる》の様に星が浮いて居た。
(二)
明方《あけがた》にはまたぽつ/\降って居たが、朝食《あさめし》を食うと止んだ。小舟で釣《つり》に出かける。汽車の通うセバットの鉄橋の辺《あたり》に来ると、また一しきりざあと雨が来た。鉄橋の蔭《かげ》に舟を寄せて雨宿《あまやど》りする間もなく、雨は最早過ぎて了うた。此辺は沼の中でもやゝ深い。小沼の水が大沼に流れ入るので、水は川の様に動いて居る。いくら釣っても、目《め》ざす鮒《ふな》はかゝらず、ゴタルと云う※[#「魚+少」、第3水準1−94−34]《はぜ》の様な小魚《こざかな》ばかり釣れる。舟を水草《みずくさ》の岸に着《つ》けさして、イタヤの薄紅葉《うすもみじ》の中を彼方《あち》此方《こち》と歩いて見る。下生《したばえ》を奇麗に払った自然の築山《つきやま》、砂地の踏心地《ふみごこち》もよく、公園の名はあっても、あまり人巧《じんこう》の入って居ないのがありがたい。駒が岳のよく見える処で、三脚を据《す》えて、十八九の青年が水彩写生《すいさいしゃせい》をして居た。駒が岳に雲が去来《きょらい》して、沼の水も林
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