も倏忽《たちまち》の中に翳《かげ》ったり、照ったり、見るに面白く、写生に困難らしく思われた。時が移るので、釣を断念し、また舟に上って島めぐりをする。大沼の周囲《めぐり》八里、小沼を合せて十三里、昔は島の数が大小百四十余もあったと云う。中禅寺の幽凄《ゆうせい》でもなく、霞が浦の淡蕩《たんとう》でもなく、大沼は要するに水を淡水にし松を楢《なら》白樺《しらかば》其他の雑木にした松島である。沼尻は瀑《たき》になって居る。沼には鯉、鮒、鰌《どじょう》ほか産しない。今年銅像を建てたと云う大山島、東郷島がある。昔此辺の領主であったと云う武家の古い墓が幾基《いくつ》も立って居る島もあった。夏は好い遊び場であろう。今は寂しいことである。それでも、学生の漕《こ》いで行く小さなボートの影や、若い夫婦の遊山舟《ゆさんぶね》も一つ二つ見えた。舟を唯有《とあ》る岸に寄せて、殊《こと》に美しい山葡萄の紅葉を摘んで宿に帰った。
午後は画《え》はがきなど書いて、館の表門から陸路停車場に投函《とうかん》に往った。軟《やわ》らかな砂地に下駄を踏《ふ》み込んで、葦《あし》やさま/″\の水草の茂《しげ》った入江の仮橋を渡って
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