た。彼女は本文「次郎桜」の主人公には季《すえ》の妹で、私共の外遊帰来三年間恒春園に薪水の労を助けた娘です。其長姉Y女も、私共の外遊前二年足らず私共の為に働いてくれたのでした。S女に相談すると、翌日の夕、彼女の長兄のI君が一担《いったん》の食糧を運んでくれました。I君は「次郎桜」の兄者《あにじゃ》で、十七年前私共が千歳村へ引越す時、荷車引いて東京まで加勢に来てくれた村の耶蘇信者四人の其一人、本文に「角田《つのだ》勘五郎《かんごろう》の息子《むすこ》」とあるのがそれです。其頃は十六七のにこにこした可愛い息子でした。それが適齢になって兵役に出で、満洲守備に行き、帰って結婚してもう四人の子女の父、郷党《きょうとう》のちゃきちゃきです。I君が担《にな》うて来てくれたは、白米一斗、それは自家の飯米《はんまい》を分けてくれたのでした。それから水瓜、甘藍《キャベツ》、球葱《たまねぎ》、球葱は此辺ではよく出来ませんが、青物市場であまり廉《やす》かったからI君が買って来たその裾分《すそわ》けという事でした。玄米でも饂飩粉でもよかった、「働く人の食料を分けてもらうのは気の毒」と私が申すと、「働くから上げられ
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