震も頭を狂わせます。来る人、来る人の伝うる東京横浜の惨状も、累進的に私共の心を傷《いた》めます。関心する人人の安否を確《たしか》むるまでは、何日も何日も待たねばなりませんでした。大抵は無事でした。然し思いかけない折に、新聞が相識る人の訃《ふ》を伝えたのも二三に止まりません。すべてが戦時気分でした。然《そう》です。世界戦に日本は手《た》ずさわるとは云う条《じょう》、本舞台には出ませんでした。戦争過ぎて五年目に、日本は独舞台で欧洲中原の五年にわたる苦艱《くげん》を唯一日の間に甞めました。あの大戦に白耳義以外|何処《どこ》の国が日本のようにぐいと思うさま国都を衝《つ》かれたものがありましょう? 欧羅巴に火と血を降らせたのは人間わざでしたが、日本の受けた鞭《むち》は大地震です。日本は人間の手で打たれず、自然の手でたたかれました。「誰か父の懲《こ》らしめざる子あらんや」と云う筆法《ひっぽう》から云えば、災禍《さいか》の受け様《よう》にも日本は天の愛子であります。ところで此愛子の若いことがまた夥《おびただ》しい。強そうな事を言うて居て、まさかの時は腰がぬけます。真闇《まっくら》に逆上《ぎゃくじょう
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