軽快なポンプにしたり、書斎に独逸暖炉を据えたり、室内電話を使ったり、心ばかりの進出をして居ます。先頃の地震でいっそ一思いに潰《つぶ》れるか、焼けるかしたら、借金してもバラック位新築せねばならなかったでしょうが、無理さすまいとてか、地震は御愛想に私共の壁を崩し戸障子の建てつきを悪くしただけで往ってしまったので、当分現状維持です。然し新造が見えすいて居る住居に、大工左官を入れるも馬鹿らしいので、地震後一月あまり私は毎日鎚と鋸と釘抜と釘とを持って、壁の大崩れに板や古障子を打ちつけ、妻や女中が古新聞で張って、兎や角凌いで居ます。書斎も母屋《おもや》も壁の亀裂《ひわれ》もまだ其ままで、母屋に雨のしと降る夜はバケツをたゝく雨漏りの音に東京のバラックを偲《しの》んで居ます。

       (三)

 九月一日の地震に、千歳村は幸に大した損害はありませんでした。甲州街道|筋《すじ》には潰れ半潰れの家も出来、松沢病院では死人もありましたが、粕谷は八幡様の鳥居が落ちたり、墓石が転《ころ》んだ位の事で、私の宅なぞが損害のひどかった方でした。村の青年達が八幡様の鳥居を直した帰途《かえり》に立寄って、廊下の壁
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